Menu

プロ家庭教師・西村先生がアドバイス 「小学校入学前の親たちへ」

西村則康先生

小学校入学前に、「ついていけるかしら」と不安になり、「いい成績をとってほしい」と願うママ・パパに贈る、本当に子どものためになる入学準備とは? プロ家庭教師の西村則康先生(名門指導会)にお話をうかがいました。※第二弾はこちら

西村則康先生の著書&プロフィール

第1回:最近気になる教育熱心なママ・パパとは?

●小さな王子様タイプが増えている

ランドセルナビ:先生は長年大勢の親子に接してこられました。最近の子どもたちの傾向で、心配されていることはありますか?

西村則康先生(以下、敬称略):幼少時から、すでに親子げんか始まっている家庭が多くなっているようですね。その結果、子ども自身がいろいろ良くない行動を学習してしまっている。「私がこういうすね方をすると、もう親は何もできなくなる」ということを学習してしまっている子が目立つように思います。

要するに、幼いうちから親に対する対処法を身につけているんですね。こうした子は、中学受験の勉強がはじまると、小さな王子様タイプ、王女様タイプになりがちです。

たとえば、親が勉強をみようとすると、「うざいからあっちへ行って」などと言う。まだ小学校3年生の女の子がこんなことを言うのです。あるいは、自分がどこまで不機嫌な顔をすれば親は文句を言わなくなるといったことを知ってしまっている子が、かなりいるんです。

ランドセルナビ:子どものほうが、親の操縦法を知っているということですか。ごく普通の家庭でも起きていることですか?

西村:こういう小さな王子様タイプのお子さんは、教育熱心な家庭ばかりですね。しかも、そういう子は、他人にはものすごくいい子であったりします。私が接してこんないい子はいないとお母さんに話をすると、まったく反対の話が出てくるわけです。こうしたケースが増えていますね。

ランドセルナビ:教育熱心な家庭ほど、小さな王子様タイプを生みやすい? なぜなんでしょう。

西村:甘やかしているわけではないんです。でも、幼少時からの家庭の雰囲気が大きく影響していることは確かです。小さいうちから、売り言葉に買い言葉で子どもと対等にやりあうような余裕のない接し方をしていると、「こうすれば親はもう何もできなくなる」ということを、子どもが自然に学習してしまうのだろうと思います。

ランドセルナビ:そうなってしまったら、どうすればいいんでしょうか。

西村:子どもへの接し方を、「これをしなさい」とは一切言わずに、「何をやりたい?」という問いかけをしていくところから始めないといけません。ただ、親御さん自身でやろうとしても、これがなかなか難しいんです。なにしろ、親のかかわりを許さない子もいますから。

私共のような家庭教師など、第三者が話をして、対症療法的に親子の関係を修復する糸口をつかむようにもっていくことはできますが、そういうアウトソーシングができない家庭となると、小さな王子様タイプの子どもとの関係を修復するのは、ものすごく難しいですね。

そうならないようにすることが、いちばん大切です。先回りして、あれやこれや言い過ぎないことや、「○○と△△、どちらをやりたい?」というように選択権をわたすような声かけが有効ですね。

●子育ては複雑系。数字で判断できない

ランドセルナビ:最近の親御さんについてはどういった印象をお持ちですか?

西村:今の親世代の教育環境をふり返ると、学校自体が個性尊重の時代でした。子どもに強制するのはよくない、順位をつけるのはよくないと思っている先生方が多い時代でした。

そのせいか、日常生活で必要となる、ほんのちょっとの我慢ができるようにすることの重要性に気がついていない方が多いようです。昔だったらしつけと言われたようなことです。(※注:「ほんのちょっとの我慢」については、第3回で詳しく解説します)

ランドセルナビ:今の親世代は、偏差値世代でもあるんですよね?

西村:そうです。数字で判断できることがすべてと考えているような傾向もありますね。たとえば、子どものすることリストや成績をエクセルに入力してすべて管理しようとする。「エクセル父さん」と呼んだりしているんですが、そういう人も多いです。

こうした方法は仕事では有効なのでしょうが、子育てにはあまり向いていません。教育というものは、因果関係がなかなかわからない複雑系なんです。相関関係があることははっきりしているのだけど、因果関係はよくわからないのです。

どういうことかというと、今やったことの成果がすぐにあらわれることもあれば、忘れたころにあらわれることもある、または一生あらわれないこともある。要するに、因果関係がわからないのです。だから、これをすればこうなるはずだという思い込みに基づいた教育は、よくありません。

いろいろやってあげることは、かまわないのだけど、「こうなるはずだ」と思い込み、その効果があらわれないからといって、子どもを責めたてるのは間違いなんですね。

2021/07/14


第2回:小学校入学までに子供に身につけておきたいこと

●文字や数は遊び感覚で覚える

ランドセルナビ:学習面で、小学校入学前に身につけておいたほうがいいことを教えてください。

西村:まず、数については、入学までに、できれば100までに数えることができるようになっているといいでしょう。数の概念なしに、口まねでもなんでもいいので数えられるようになっていること。また、10までの数については、補数(あといくつで10になる)の感覚は身につけておいてほしいですね。

文字については、自分の名前がひらがなで書けること。このとき、鏡文字にならないように注意してください。

ひらがなは、できれば読み書きできるようになっていてほしい。カタカナは書ける必要はないが、読めるというところまではいっていてほしい、と、こんなところでしょうか。

これらのことは、いつのまにか覚えている子もいますが、そうではない場合、勉強としてやらせるのではなくて、遊びとしてやらせてほしいのです。たとえば、落書きをするような感じです。

今、非常にいい落書き用のシートがあります(パイロット:スイスイおえかき)。指に水をつけて文字や絵を描ける。しばらくたつと乾くと消えるので、また使えます。大きなサイズもあるので壁に貼っても床に置いても自由自在です。こういうものを使って、あくまでも遊び感覚で覚えるというかたちがいいのです。

ランドセルナビ:読み聞かせが効果的だと言われていますが、やっておいたほうがいいでしょうか。

西村:そうですね。ただ読み聞かせればいいというわけではありません。親が読んでいる間に、絵本の絵を自分で眺めながら、耳から入ってきた言葉をある程度理解しながら、両方をあわせて、情景を曖昧でもいいから思い浮かべることができるかどうかが重要なポイントです。

それができていない、あるいは嫌がっているのに、義務感にかられて読み聞かせをやるのはいいことではないと思います。文字や数字を覚えるのと同じように、あくまでも遊び感覚で読み聞かせをしてほしいですね。親の表情や声の調子が大切です。うまくいけば、その子はまず間違いなく、本好きになりますよ。

●実際に見て、触って。これが大切

ランドセルナビ:数や文字、言葉を遊びの中で覚えていってくれればいい。それができなければそれはそれでいいといった感じでしょうか?

西村:原則はそうです。ただし、入学式前の半年間で、自分の名前がひらがなで書ける。10まで数えられて、補数が正確にわかるといったレベルまでもっていかないと、1年生で劣等感を感じる危険性があるかもしれません。10までの数字の足す、引くがわかるようにしておいたほうがいいでしょう。

ただ、それ以上に、実際に触って見てということが、ものすごく重要です。たとえば時計。時計の見方については、「今、何時」と「○時半」が使い分けられればそれでいいと思います。それよりも大切なのは、時計を触ることなんです。

おもちゃの時計でもいいですが、長針を回していくと、短針もゆっくり動くということを知ることが、とても重要です。できれば本物の壁時計をはずしてきて、後ろのつまみを回して、時間をいろいろ変えてみるといったことをやってほしいですね。

これは、料理の食材などでも同じです。ママと一緒にキッチンに立って、野菜などの食材を切ってみるとか、なめてみるといったことをするといいですね。遊びの中で、いろいろと体験するのがいいんです。

リキクロック0401

子供部屋からリビング、寝室まで、あらゆる部屋に似合う壁掛け時計

●点数を気にするのは読み書き計算だけでいい

ランドセルナビ:入学後に注意したほうがいいことはありますか?

西村:教育熱心な親御さんほど、やらせすぎです。年長、小1、小2あたりまでに、過激な先取り学習をさせてしまったという方の場合、4年生あたりで伸びがぴたっと止まるというケースがよくあるんです。

そういう親御さんは偏差値で判断する傾向があります。小学校1年生で偏差値で判断して、何かが見えるかというと、実は何も見えない。

幼稚園から小学校低学年にかけては、点数にあらわれない能力というものを鍛えている時期なのです。

ランドセルナビ:この時期は点数がでるものについては、あまり感心をもつ必要がないということですね。でも、そういうの今の学歴の高い親御さんは苦手そうですね。

西村:そうですね。点数を気にするのは、読み書き計算の部分だけでいいんです。

2021/07/21


第3回:成績に影響する生活習慣とは?

●5分間の我慢が学習習慣を左右する

ランドセルナビ:小学校に入って成績でついていけるかどうかが不安なママに対しては、第2回のアドバイスがとても参考になりました。ほかにはありませんか?

西村:実は、もっと重要なことがあります。それは、我慢して人の話を聞き続けることができるかどうか、です。

数が10までわかっていてひらがなで名前が書けても、小学校の授業についていけない子は確かにいます。そういう子たちは、5分間の我慢ができないんです。

小学校1年生の場合、授業でひとつの説明を10分もかかって長々と説明するということはありません。ひとつの事柄の説明は、だいたい3分くらいで終わるように先生方は工夫されています。

宿題も、ちゃんとやれば5分ぐらいですむ程度のものなんですね。まあ、音読の宿題だけは別でもっと時間がかかりますが。鉛筆を持ってやる宿題は5分以内でおさまる。その我慢ができない子がいるのです。

ランドセルナビ:どう対処すればいいんでしょうか。

西村:こういう場合は、全然別のところで我慢の経験を積ませるといいと思います。たとえば、テーブルに夕食が並んでいる。みんなが揃うまでちょっと待っててね、とかね。おやつのときなら、ショートケーキが並んでいる。そこですぐにペロッと食べちゃう子もいるんだけど、みんなが揃うまで待とうね、というふうに。これが待てるかどうかがポイントです。

あるいは○○のお手伝いをしてほしいといったことがあったとします。カーテンをあけてきて、と言うだけではなく、カーテンあけてから新聞とってきて、とか、もしくは、カーテンあけて新聞をとってきてから○○をしてきて、というふうに項目を増やしていきます。そうすると、だんだんと我慢して、最後まで聞く習慣が身につき始めます。

そういうほんのちょっとした我慢。「我慢しなさい」というのではなくて、我慢したことを認めてほめてあげることの繰り返しで、5分間の我慢ができる子になっていくんですよ。

ランドセルナビ:ちょっとした我慢であって、すごい我慢ではないんですね。

西村:そうです。ちょっとした我慢というのは、人の話を聞く我慢というだけではなく、学習の習慣をつけていくときにもものすごく重要になるんです。それを昔の人はしつけといったわけですね。

●生活の中の刺激が子供の能力を高める

ランドセルナビ:ふだんの生活がとても大切なんですね。

西村:数字の力とかは、身についているかどうか計測しやすいですね。でも、計測しにくい能力のほうが、実はもっと重要なんですね。

もともと上手に子どもとつきあえる親であれば、何も意識しなくて、楽しく子どもとつきあう中で子どもの能力を自然に引き出せるのですが、そうではない場合、つい意識的にやろうとしてしまいます。そのとき、与えるのは早ければ早いほどいいという勘違いとか、多くを与えれば与えるほどいいという勘違いが起きてくる。これがものすごく多いように思います。

ランドセルナビ:これをやりなさいと具体的にリストアップして覚えさせることより、生活の中でいつのまにか身につくようなことってことですね。

西村:そうです。子どもは、発達段階に応じて遊びの種類が自然に変わっていきますね。それを後押しするようなつきあい方を考えていただければ、それでいいんです。

ランドセルナビ:具体的に、どのようなことを心がけたらいいでしょうか。

西村:たとえば空間認識能力、物事を注視できる力は、本当はとても重要なんですね。どこを見れば、目をどこに動かせば、必要なものをすぐに認識できるといった力です。

では、そのために見る練習をさせればいいのかというと、それはダメです。そうではなく、親子で散歩に行ったとき、あそこにきれいな花が咲いているねと親が言った。それを子どもがどこどこ?と探すといった経験を積み重ねる。それを意識しないでできるようになるといい。

実は、子どもの注意力はものすごく低いんです。大人であれば、空を見上げてアソコに飛行機が飛んでいるね、と言われたらすぐに見つけることができます。

でも、物理的に目がもっといいはずの幼児は、アソコと指さしても飛んでいる飛行機を見つけることがなかなかできません。目には画像情報はいっぱい入っているはずなのに、頭の中の処理として、その飛行機の形を認識するということがまだ未熟なんですね。

だから、親が認識するきっかけを作ってあげるといい。ふだんの生活の中で、そういう経験を積んでいけば、パッと目には入ったものを「これは○○だ」と認識する能力が身につくようになるのです。

ランドセルナビ:ということは、親子でこういうことをやっているかどうかで、そういう能力の発達度合いが変わってくるということですね。

西村:はい。年長さんあたりで、アリが動いている様子をじーっと座りこんで見ている子がいますよね。そういう子は、ものすごく細かくモノごとを見るということを、意識しないで学習しているんですね。好奇心の強さにも深く関係してくると思います。

●幼児期の学習は、親が一緒に遊ぶこと

ランドセルナビ:生活が便利になって、家事も手間がかからなくなりました。子どもが家事を手伝うことも少なくなりました。そういうことも影響していそうですね。

西村:すごく大きいと思います。注意しておかないといけないのは、昔と同じように考えるのは、実はよくないことです。昔の子は、勝手に身体感覚を鍛える場がどこにでもありました。外に遊びに出ることそのものが、学習だったんです。

そういう機会が今の子どもたちにはめっきり減ってしまいました。意識的に、そういう刺激をあたえないといけないということが多くなっているんです。

ランドセルナビ:親がやってみせるとか、一緒にやってみようとわざわざしてみるということが必要になってきているんですね。

西村:はい、そういうことが親の大きな役目になっていると言ってもいいでしょうね。遊びそのものが学習なんだ、幼児期の学習というのは親が一緒に遊んでやることなんだ、というのが、実はいちばん正しいやり方なんです。

2021/07/28


第4回:お稽古事について

●「ルールを守りなさい」は言ってOK

ランドセルナビ:ふだんの遊びの中で、絶えず子どもの好奇心を刺激するのがいいんですね?

西村:そうです。と同時に、ほんのちょっとしたことでもいいので、毎日、続けることをルールとして、そのルールを守っていくようにするといい。勉強という範疇ではなく、ルールを守るという範疇でやらせてほしいです。

たとえば1分間、100ます計算はたいへんでしょうけど、5×5の25ますの10までの計算を毎朝するということを、子どもと約束したとしましょう。

そのとき、勉強することを守らせるのではなく、毎朝するという約束、つまりルールを守るという意識を持たせるようにします。これが大切です。

遊びの中でも、ルールを決めることはありますよね。勉強しなさいとは言わないほうがいいけれど、約束やルールを守りなさいということは言っていいんです。

●5分間の我慢は家庭で訓練

ランドセルナビ:なるほど、勉強という意識ではなくルールですか。

西村:これは、ちょっとした我慢、第3回で説明した「5分間の我慢」ができるようにするためでもあるのです。ただ、注意していただきたいことがあります。この訓練は家庭でやってほしいのです。

5分間の我慢と聞いて「だったら、公文に入れればいい」と思っちゃうという人がいます。でも公文は、5分じゃ終わらないんですよ。いきなり30分の我慢を強いることになるんです。

5分間我慢ができるようになってから、公文にいれればいいんだけど、我慢をさせるために公文にいれるのは、途中を省きすぎということですね。

ランドセルナビ:「5分間の我慢」は他人まかせにしないほうがいいんですね。

西村:はい。5分間の我慢というのは、いったん身に付けば、本人にとってもそれほど大変なことではありません。幼少期からぜひ訓練しておいてください。

●お稽古事は楽しく続けられるものを探す

ランドセルナビ:お稽古とかスポーツ教室に行かせている家庭はとても多いようですが、そういうので忙しくなっている子については、どう思われていますか?

西村:都会に住んでいる子どもたちにとっては、必要なことになっていると思います。昔だったら、遊びの中でいろいろ学習できたし、体を鍛えることができたのですが、今はできないのですから、それを補う意味で必要な気がします。

ただ、それを親のこうあるべきという気持ちでどんどん追加していくのはよくないと思います。あくまでも子供が楽しんでやっているかどうか、楽しく継続できることを探してあげるという意識でやってほしいと思います。

ランドセルナビ:英語塾とか、プログラミング教室とかは?

西村:タブレット学習なども含めて、英語学習についても、今、壮大な実験が行われている段階だと思います。幼少期から英語をやって、本当に効果があるのかどうか。まだよくわかっていないんですね。

ネイティブのように発音するためには、ピアノのように早ければ早いほどいいという説もありますが、日本語という母語をもっともっと勉強してからのほうがいいという人もいます。まだ、どちらが正しいかわからない状態です。そういうことをわかったうえで英語をやらせてほしい。

この段階で、英語が上手にならないといけないと思ってやるのではなく、ここでも遊びという感覚でやってほしいですね。

プログラミングは、これは難しいですね。理科の実験教室と同じなんですよ。自ら進んでやってみたいという子と、やっているのを眺めているだけの子がいます。

ランドセルナビ:そういえば、小学校の家庭科でも、何もしないで眺めている子がいました。

西村:言われたことをそのままやって、できただけではダメで、言われたことはやってみるけれど、言われていないことも、やってみたらどうだろうというふうに、参加のしかたとして、積極的に参加している子だとしたら、プログラムという技術を高める効果だけでなく、試行錯誤できる能力を一緒に鍛えていることになるので、とても素晴らしいです。

でも、なんとなく行っているだけ、教室の先生の言っているとおりにやって、ああ動いたで終わっている子の場合には、ほとんど効果はありません。

お稽古事は始めたら続けなければいけないと思うのは、実は間違いです。ここはルール化してはいけません。楽しく続けられるものを探してあげるのが正解です。

2021/08/04


第5回:中学受験を念頭に入れた入学準備

●早期教育には注意しましょう

ランドセルナビ:小学校入学前から中学受験のことを念頭においている親御さんも多いと思います。中学受験するなら、入学前から考えておくべきことはありますか?

西村:まず、何か特別なことをして、他の子たちをだしぬいていこうという親の考えは、ほとんど失敗すると考えていいです。

学習系の幼児教室について、あまり効果がないというか、実は害があるものもいっぱいあるということを知っておいたほうがいいです。

ランドセルナビ:ということは、学習系の幼児教室に行かせるぐらいなら、親が一緒に遊んであげたほうがいいと思っておられますか?

西村:ええ、それが可能ならば、そうですね。幼児教室の中でも、いいな、というのは確かにあります。それは、何かを教えていくという成績をつけるタイプの教室ではなく、子どもたちに実際にモノにふれさせて、まさに指導者と子どもたちが一体となって遊んでいるような雰囲気のところ。そういうところは、少なくともマイナスはない。プラスなことが多いと思います。

逆に、何々の能力を鍛えますといったことを謳っているようなところは危ない。右脳刺激して直感力を鍛えますといったことがウリの教室はまゆつばのケースが多い。

ランドセルナビ:中学受験を考えているお母さんとしては、そういう能力開発的なところに行かせようと思いますよね。

西村:そうなんですよ。あまり信用しないほうがいいんですけどね。

●「勉強しろ」と言わずに勉強する工夫を

ランドセルナビ:先取り学習でほかの子たちを出し抜きたいというのは失敗するとおっしゃいましたが、そういう親の気持ちが子どもに伝わっているということでしょうか?

西村:ええ、そうですね。実は、中学受験に大きく成功するか、そうでないかというのは、子どもが自ら勉強できるかどうかにかかっているんです。親が勉強しなさいと言わずにすむ状態の子が、実はいちばん成績がいいんです。

ランドセルナビ:楽しんで勉強しているんですね。

西村:自分の好奇心に基づいて、なぜなんだろう、みたいに思って自分でやっていく子、あるいは難しい問題が解けるのがうれしい、だから頑張るみたいな子ですね。

幼少時からこれをやりなさい、あれやりなさいと言い続けられると、今、いちばん問題になっている、やらされ感いっぱいの受験勉強をする子になってしまうんですね。

ランドセルナビ:いったんそうなっちゃった子は、どうやって対応するんですか?

西村:(私たちが)出会えた子の場合は、学習の中で遊ばせてあげるようにしています。すると、ある程度、勉強の楽しさも知って、わずかずつですが、自分から勉強ができる子にかわっていきます。

ところが、それを親がやろうとするのはとても難しいんです。親の言葉自体が、子どもにとって、強制されることという刷り込みができあがっていますから。

ランドセルナビ:ということは、幼少時には、やらされ感いっぱいの子にしないということがすごく大事なことですね?

西村:そうなんです。いかに勉強しなさいを言わないか。勉強しなさいをいわずに、勉強させる工夫ですね。そこを親が考えないといけません。

●家庭の会話こそ学力の源

ランドセルナビ:最後に、入学前の親御さんへのメッセージをお願いします。

西村:勉強のいちばんの基本って、国語力というか、聞く力、書く力であり、もしくは解釈する力であり、言葉の力がものすごく大きいわけです。そして、その力の源は、家庭での会話なんですね。

家庭での会話が「やりなさい」とか、たしなめる言葉ばかりになっていたら、その子の言語力は発達していきません。ほめるとか、おだてるとか、いろんな雑談をする力とか、そういうふうなものは、すべて家庭内での会話で育っていきますからね。

家庭内の会話が貧相であれば、言語力の育ち方は遅れます。お母さんやお父さんがいろいろなことに関心をもてば、家庭内の会話も豊かになり、子どもの関心も広がっていきます。親子一緒に、勉強としてではなく遊び感覚で、いろいろなことに関心を向けるようにしていってほしいと思います。

2021/08/11

◎第二弾:小1からの塾&通信教育の選び方はこちら


■西村則康先生プロフィール

40年以上、難関中学、高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師(名門指導会)。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。
暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。
これまでに多くの子どもたちを、開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高付属中、東大寺学園中などの最難関校に合格させてきた実績を持ち、テレビや教育雑誌などでも積極的に情報発信を行い、保護者の悩みに誠実に回答して熱い支持を集めている。
著書は写真左から、 「中学受験! 合格する子のお父さん、受からない子のお父さん」(ウェッジ)「子どもの学力を伸ばす親、ダメにする親」(KADOKAWA)ほか、「わが子が勉強するようになる方法-2500人以上の子どもを超有名中学に合格させた「伝説の家庭教師」が教える超実践的な38のルール-」(アスコム)、 「中学受験基本のキ! 第4版」(日経BP)、 「中学受験やってはいけない小3までの親の習慣」(青春出版社)など多数。 また、中学受験情報サイト「かしこい塾の使い方」は、20万人以上のママたちが参考にしている。