近藤かばん
どんなメーカー?
数少ない熟練職人が完全オーダーメイドで作るランドセル工房
近藤かばん(近藤製鞄所)は、1949年(昭和24年)に名古屋で創業した小さなランドセル工房です。多くのランドセルメーカーと同様、最初は鞄問屋に卸す製品を作っていましたが、ネット販売が盛んになってから直販へと徐々に軸足を移してきました。
現代表の近藤和行さんは、この道半世紀以上のベテラン職人。いまやランドセル製造も分業制が進んでおり、本革の見立てから裁断、組み立て、縫製、そして細かな仕上げに至るまで、完璧にこなせる職人は年々減少しています。近藤さんは、全国的にも数少なくなってきたランドセル作りの名手のひとりです。そんな技が評価され、第33回創作技術コンクールで経済産業大臣賞を受賞しています。
このメーカー最大の特徴は、本革製のフルオーダーシステムという、今やとても珍しい製作方法でランドセルを手作りしていることです。年間の製作数は700本程度と少ないのですが、使われている素材の品質や組み立ての精度、縫製の美しさなど、どこをとっても品質は最上級と言ってもいいでしょう。
なぜ手間のかかるフルオーダーシステムを採用したのか。近藤さんは、次のように語ります。
「親父のときから70年、自分もランドセル一筋で50年以上、作っています。うちは本革を使って少量生産ですから、その特徴を生かし、大量生産ではなかなか難しい完全オーダーを採用することにしました」
近藤さんは、ランドセルナビでも紹介したナガエかばんの長江幸雄さんと同い年で、ときどき会って情報交換しているそうです。高品質のランドセルを手作りしていることで、全国的にも知られるようになった腕利きのランドセル職人ふたりが仲の良い知り合いというのも、取材をして初めて知りました。
本体の素材に牛革やコードバンなどの高品質な本革を使った完全オーダーシステムで、大マチと背当ての接合部分など、力のかかる部分は手縫い仕上げ。しかし、値段は高くないどころか、はっきり言って安い! お店を直接訪ねてランドセルを購入する人は、東海三県(愛知県・岐阜県・三重県)の人が多いのですが、最近は口コミで全国的にも名が知られるようになりました。ランドセルの品質と価格を見ると、それも当然だと感じます。本革製ランドセルを探しているならば、「わざわざ訪ねる価値」のある工房と言えるでしょう。
ランドセルへかける情熱
ランドセルは家族の記念。手間を惜しまず細部までていねいに作り込む
ランドセルは大人用鞄と比べてもパーツ数が多く、ただでさえ組み立てに手間がかかります。革素材の色やパーツを選べるフルオーダーにすると工程はいっそう複雑化し、間違える可能性も高くなります。また、フルオーダーですから、親子で選ぶときに時間がかかります。2時間くらいかけて選ぶとお客様も珍しくないとか。
近藤かばんでは、そうした,注文から製造、配送に至るまでのすべてのステップで、手間を惜しみません。ランドセルは、小学校入学という子供の一大イベントで、両親や祖父母の思いを込めて購入するものだからです。
「6年間、型崩れしないよう、しっかりと作るために、内部の補強はもちろん、大手ができないような、細かいところまできっちり作り込むようにしています。背当てと大マチの縫製部分はすべて手縫いにしているのも、高品質でしっかりとしたランドセルを作り、お子さまの6年間をサポートするためです」
本革と手縫いにこだわり、作る手間は惜しんでいません。「手縫い」を売りにするメーカーは多いのですが、近藤さんはその縫い方もひと味違います。革を縫い合わせるときは、大きな櫛のような道具(菱目打ち)で目印となる穴を開けるのですが、穴を大きくすれば糸を通しやすくなります。しかしこれだと、革の繊維が傷みます。近藤さんはできるだけ目印の穴を小さくし、一目ずつ専用のキリで穴を少し広げ、糸を通してギュッと締め上げています。伝統的な革職人の技です。だから丈夫だし、見た目も非常に美しいのです。
手間のかかる作り方をする一方で、カタログや広告など、ランドセル本体以外にかける手間や経費は、可能な限り低くおさえているのも近藤かばんの方針です。価格をおさえつつ、より高品質で丈夫なランドセルを作るためです。
また、天然皮革ランドセルは「1.4~1.5kgあったほうが強度もあっていい」というのが近藤さんの持論で、無理な軽量化をしていないのも、近藤かばんのこだわりと言えるでしょう。
どんなランドセル
品質の高さ、雰囲気の良さがにじみ出る手縫いランドセル。限定カラーも美しい
近藤かばんのランドセルは、すべてA4フラットファイル対応で、使われている素材はコードバンと牛革。ただし、ヘリは摩擦に強い人工皮革です(これは他社も同じ)。牛革もコードバンもツヤ消しの革を使用しているため、見ただけではコードバンとの違いがわかりにくいのですが、ランドセルを持ったり革を少し押してみたりすると、コードバンの張りがよくわかります。
オーダーの基本となるモデルは、「総コードバン」「コードバン」「牛革」「牛革カモフラージュ」「牛革サックス(水色の革)」「牛革ラベンダー」「牛革グレンチェック」の7種類。これらのベースモデルの中からひとつを選び、カラーやアイテムを選ぶ仕組みです。標準仕様で変更可能なものは、次の7つです。
A:本体の色 B背中革の色 Cカブセ裏と内張り D:前ポケット名刺入れの種類 E:大マチの模様 F:カブセ鋲の種類 G:ファスナー引っ張りの種類
それにプラスしてオプションがあり、金具をアンティーク金具にしたり、へりのテープや胴締めの色、ステッチのカラー、カブセ裏の変更(天然の吟ブタへ)、持ち手をつけるなど、ほぼすべての部分を好みの素材や色に変更できます。
売れ行きをみると、コードバンと牛革が半々、総コードバンが1割といったところ。人気の色は、男子が黒と紺、女子が赤、チェリーピンク、ブラウン、ラベンダーです。近藤さんによると、男子では黒が半数くらいですが、紺のほか、グリーンやキャメルを選ぶ子が増え、女子はここ数年、ラベンダーを選ぶ子が増えているそうです。
型崩れ防止のための対策も万全で、大マチには鋼鉄の板ばねを入れ、耐久性を上げています。また背負いやすさへの配慮も抜かりはなく、立ち上がり背カンと立ち上がりのないラクラク背カンのどちらかを選べるほか、背当てのクッションに23mmのスポンジを入れ、背中への当たりと通気性を確保しています。耐久性を考えて無理な軽量化はしていませんが、重量は1400g~1480gと、本体まで本革で作られたランドセルとしては標準的な重さになっています。
近藤かばんのランドセルは、全体の雰囲気が落ち着いていて、とても作りがしっかりしています。また、本体のみならず背当てのパステルカラーが美しく、実に魅力的です。しかし、店舗が小さいので、子供と両親、祖父母が入ると、店がいっぱいになってしまいます。オーダーのアイテムをひとつひとつ最初から決めようとすると、なかなか意見がまとまらないケースも見受けられます。それを補うために、WEBサイト上にシミュレーションシステムがあるので、大いに利用しましょう。
カタログの素材見本やネットの写真を見ただけでは、近藤かばんの品質の高さ、雰囲気の良さはなかなかわかりにくいのですが、文句なしにおすすめできるランドセルのひとつであることは確かです。ネットのシミュレーションだけで選んでも、まったく問題はないと断言できます。
その上で、もし可能であれば、お店で最終的に色やパーツを確認しながら注文してください。きっと満足のいくランドセルを作ることができると思います。
ただ、少量生産のため、毎年、夏には完売になるモデルが続出します。近藤かばんのランドセルを購入するなら、なるべく早めに決める。これがいちばん大切なことかもしれません。
【近藤かばん 2024フルオーダーランドセル】
近藤かばんのWEBサイトにはシミュレーションシステムがあります。ここで、本体の色や背当ての色、肩ベルト裏の色、カブセ裏の内張といった基本的な要素を決めた後、オプションを選んでランドセルを注文する仕組みです。オプションが不要であれば、選択しなくて大丈夫。簡単なので、試してみてはいかがでしょうか。
◆総コードバン
革の最高峰「革の王様」と呼ばれるコードバンを、カブセと大マチに使用しました。カブセ2枚分のコードバンが使われている、贅沢なランドセルです。カラーバリエーションは9色で、各色30本の限定生産モデルです。カブセのみコードバンを使い、本体は牛革の「コードバン」(¥79,000)もありますが、こちらは限定生産ではなく、通常のモデルです。
¥97,000~(税込)
◆牛革カモフラージュ
表面にカモフラージュ柄を型押しした牛革を使った、限定30本のランドセル。カラーは黒のみ。男の子に人気のモデルです。
¥68,000~(税込)
◆牛革サックス
特別注文した水色がかわいいランドセル。本体の素材は牛革。女の子に人気の高いモデルです。限定30本。
¥67,000~(税込)
◆牛革ラベンダー
ラベンダーも、最近、女の子に人気の高い色。近藤かばんは、特別注文のラベンダー色で牛革を染めました。これも限定30本のモデルです。なお、通常の牛革モデル(¥59,000~)は、8色から選べます。
¥67,000~(税込)
素材 | ヘリなどには摩擦に強い人工皮革を使用していますが、本体は牛革とコードバンを使用しています。一部の限定モデルは、特別注文のカラーを採用。背当ての素材はソフト牛革で、パステルカラーが美しい。 |
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サイズ | A4フラットファイルサイズ対応 |
各部の特徴
万全の型崩れ防止対策
上部のテープは太い糸でダブルステッチのストロング縫い。大マチ上部にはプラスチック芯材に加え、鋼鉄の板バネを付加して2重に補強。マチの型崩れを防止しています。
U字型の背当てクッション
背当てのクッションが分厚いのも近藤かばんのランドセルの特徴です。内部のスポンジの厚さは23mmあり、中央を大きくくぼませたU字型のため、空気が通りやすく、ムレを防ぎます。表面の素材は肌触りがソフトなソフト牛革です。
反射材を配置して安全性を確保
カブセ、大マチ(胴体横両サイド)、左右の肩ベルトに反射材を使用しています。子供の安全対策にも、可能な限り配慮しています。
- 価格帯
- 67,000円~97,000円(税込 2024モデル) ※ベースモデルの価格です
- 保証・アフターケア
- 6年間の品質保証付き。通常使用での破損は無償修理。故意によるキズや破損に関しては有償修理。
近藤かばんの「ここが魅力」!
小さな工房にしかできない完全オーダーシステム。ランドセル本体や背当ての色、各種のパーツや模様などを選び、腕利きのベテラン職人が、良質な素材を使って世界にひとつだけのランドセルを作ってくれます。もちろん、重要部分は手縫い仕上げで品質は最高レベル。そのわりに値段が安いのも大きな魅力です。社名 | 近藤製鞄所(近藤かばん) |
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本社 | 愛知県名古屋市西区枇杷島5-9-3 |
TEL | 052-531-4975 |
店舗 | ショールーム:本社併設(駐車スペース有り) |