【子どもの準備7】勉強についていくための入学準備とは?
落ち着いて話を聞くことができますか?
「入学して勉強についていけるかしら?」という不安がよぎると、「今のうちに、教えておこう」と、文字や数字の読み書きを教え始めるママが多いようです。でも、教育の専門家は、これは全くの見当違いだと言います。つまり、入学前から読み書きができていれば、勉強についていけるわけではないということです。
勉強についていけるかどうかは、教わることを身につける準備ができているかどうかに関係しています。つまり、学校の授業がちゃんと受けられるかどうかが、もっとも大事なポイントです。授業中、落ち着いて座って先生の話を聞くことができれば、学校で学ぶことは確実に身についていきます。子どもの吸収力は大人とは比べものにならないほどのパワーなので、ひらがなや数字などあっという間に覚えてしまいます。
では、お子さまは、授業中、落ち着いて先生の話を聞くことができそうでしょうか? わが子のことですから、想像がつくと思います。たとえばたった5分、落ち着いて座っていることができないと、勉強についていけなくなる可能性は高くなります。
ただ、今は、このタイプの1年生が少なくないので、小学校でもいろいろと対策をしています。もしまだ落ち着いて授業を受けられそうにないなら、入学してから担任の先生に実は…とお話をしておくのもいいと思います。そして、入学前には、知識の先取り学習より、落ち着いて話を聞く訓練として読み聞かせをしてあげることをおすすめします。
それからもうひとつ、学校や先生へのイメージが否定的なときも危険です。ママやパパ、周囲の大人が学校のことをよく思っていないと、その思いは必ず子どもに伝染するので注意してください。
最低限のことができるだけで十分
勉強関連で、最低限できるようにしておきたいことは、【子どもの準備4】で書いた「時計が読めること」と、「自分の名前がひらがなで読めること」と、「数字の1,2,3,4,5,6,7,8,9,10がわかること」ぐらいでしょう。
もうひとつ付け加えるなら、「鉛筆を正しく持てる」ようにしてあげると、お勉強のスタートが楽ちんになります。親子一緒に鉛筆で名前を書いたりするといいですね。鉛筆は間違った握り方を覚えると、中学年・高学年になってから成績に影響してきます。入学前でなくてもいいですが、正しい握り方をしているかどうかは、チェックしておいてください。
学校で習うことを先に教えておいて、最初から他の子よりいい成績を取らせたいと思う親御さんもいるかもしれません。でも進学塾の講師の先生は、こう断言しています。「他の子を出し抜こうという親の欲目は、逆効果です。先に知っていると授業がつまらなくなって、その先の知識が身につかなくなっていくんですよ」。これ、肝に銘じてくださいね。
入学前は生活感覚をしっかり育てる
今の時代、小学校入学前後の子どもの傾向として教育の専門家が問題視しているのは、勉強より生活感覚のほうなのです。
親や周囲の大人が世話を焼きすぎて、日常生活のごくごく基本的なことが自分でできなかったり、自分の希望を伝えることができない子が増えています。社会が貧しくて親が子どもの世話をする余裕がなかった時代には、どんな子でもできていたことが、できない子どもが増えているのです。
たとえば、今日は雨だとわかったら、出かける前にさっさと自分で傘を出してくる子と、傘を用意すべきことを思いつかない子の違いです。後者は、いつも親がやってくれているから、雨と傘の準備が頭の中でつながっていないのです。これは頭のよさや性格には関係はありません。でも、このような日常生活の小さな違いが、成長過程で大きな違いとなって、学業成績にも影響してきます。
なぜかといえば、生活感覚こそ勉強の土台だからです。生活感覚という土台がないと、学校や塾でいろんな知識を身につけても、当面は覚えていても、すぐに忘れてしまいます。「親が早期教育などに一生懸命で就学前から塾やお稽古で忙しく、衣食住はすべて親が世話をしている子に多いですね。こういう子は中学受験でも、高学年になると成績が失速してきます」と進学塾の講師の先生。
小学校で学ぶことは、当然のことながら、将来どんな道に進むとしても必要な基礎知識です。そして基礎知識は生活感覚と融合してこそ身につき、子どもの精神的な成長をより豊かにしてくれます。就学前からさまざまなことを学ばせても、それが子どもの頭の中で日常生活と断絶していると、結局は忘れられていきます。
入学前には、机の上で学ぶお勉強より、家で親子一緒に家事をしてみたり、博物館や美術館に行って初めてのことを体験してみたりするのが、小学校の勉強についていくためにも大切なことなのです。
2024/10/13